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あなたがよければ、六日の朝に

ひねもすのたり、のたりかな。なんでもない今日を、唄うように、踊るように生きると決めた。

倉敷、苔のむすまで


こんばんは、六日です。


おとといは、仕事関係のもろもろを早めに切り上げて夕方、岡山から倉敷まで足をのばしてきました。

白壁の蔵屋敷が続く、倉敷の美観地区。
そこにどうしても一度行ってみたい場所があって。

岡山から糸崎方面への山陽本線に乗ると、4駅目が倉敷です。倉敷駅から美観地区までは歩いて15分ほどでしょうか。



この日の目的は、美観地区にある古本屋「蟲文庫」さん。
こちらのご店主、田中美穂さんを知ったのはかれこれ10年ほど前。愛読していたクウネルに彼女についての記事があり、その生態(すみません)にいたく憧れを抱いたのを覚えています。

田中さんは苔愛好家としても知られ、今では苔や亀についての著書のほか、植物関連の本の解説を書かれたりと文筆家としても活動されています。


小さい頃から本の虫であった田中さんは、弱冠21歳のときに古本屋になることを思いつき、自分の持っていた500冊の本を並べて、ある日突然お店をはじめたのだそうです。




(こちらの店内の画像は、蟲文庫 岡山・倉敷 よんどくさんよりお借りしました)


蟲文庫は今年で23年目になるのだそう。

明治初期の趣ある町家を改造したこちらの店舗には、8畳ほどのスペースに古本が所狭しとぎっしり敷き詰められており、1人そこに立つとすれ違えないほど。わたしがおじゃました時は、すでに5人ほどのお客さんがいらっしゃいました。
どうにかして奥に進むと、しゃがみこんで熱心にご本を読まれているご婦人が。

店舗奥の3畳間は帳場となっており、積まれたたくさんの古本(これから寝付けをするのでしょうか)顕微鏡(苔を観察するのだろうな)などなどに囲まれて鎮座する田中さんの姿が。
静かに本を読まれていて、手元には使い古された国語辞典があり、またそれも絵になること。


帳場は見通しがよく裏庭に続いており、石垣になっていました。
時間帯によっては陽が差し込むこともあるのだろうそこは、よい具合に日陰を作っていて。これまたよい具合に苔むすのだろうな。




こちらの写真は、クウネルから。

着の身着のまま、手作りの布袋にルーペ、採集袋、方位磁石、高度計、野帳、筆記用具の採集グッズを入れ、じょうろ(苔に水をかけてやるのだそう)を手に苔採集にでかけるのだとか。

蟲さんは、保存食を作るのが好きなのだそうだ。ふきの佃煮、らっきょう、梅干し、梅酒、白桃のコンポートにぶどうのワイン煮、春から秋にそわそわとこしらえて、1年中大事に食べる。

それにしても、ちらほらとお客さんの姿はあっても、日がな1日好きなレコードをかけながら本を読み、苔を観察し、という生活は、あまりにのどかで平和だ。


こう読んでみると悠々自適に見えなくもないけれど、古本屋の経営というのは想像する以上にたいへんなことなのでしょう。
文筆活動もされている今はわかりませんが、10年近く前の記事には、当時お店を存続するため蟲文庫を閉めたあとは郵便局やコンビニのレジ打ちなどをしている、と書かれていました。


「こちらの思惑などいっさい意に介しない、人とはまるで違う摂理の生き物」
じっさいにお会いした田中さんは、思い描いていた通りの方でした。もの言わぬ苔のようなその生態にどきどきして思わず息をつめてしまいながら、夢見心地で倉敷の陽は暮れてゆきました。

ぜひまた訪れたい場所です。







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